パワートレーニングバイブルを再読

ハンター・アレン、アンドリュー・コーガン博士共著の『パワー・トレーニング・バイブル』を再読した。1回目は大学に入学したとき、パワートレーニングを本格的にやってみようと思って読んだ。正直難解な数式や、末尾添付資料に飛ばなければならないことが多く、30%程度の理解度で止まっていたように思う。このころは、部活の仲間と一緒に練習することも多く、自分で計画したインターバルなどを忠実に実施できる環境になかったのも、この本を完全に理解して読み進める気にならなかった理由である。

しかし状況が変わって、現在はいかなる練習メニューもこなせる練習環境の良い場所に住み、24時間の時間をフルに使って自転車をできる。そうした環境で再読してみると、どうだろう、話がするすると頭に入ってくる。
それと同時に、やられた、とも思った。こんなに詳細にパワートレーニングについて書いてしまったら、パーソナルコーチ要らないじゃん、と。いや、僕がやりたいことはパワートレーニングをより身近にして、コーチがいなくてもサイクリストそれぞれが自分に合った練習メニューを組めるようになることなので、問題はないのだが、自分のやりたかったことをだいぶ先にやられてしまっていたな、という悔しさのようなものはあった。

それだけに、この本を読めば、パワートレーニングを一通り自分でできるようになるまでの知識がつく。なんだ、僕のやろうとしていたことは何年も前に頭の良い人にやられていて、僕の出る幕はないじゃないか。一瞬思った。
では、丁寧に日本語翻訳版まで出版されていて、2011年から市場に出回っているのに、身の回りのシリアスレーサーたちのほとんどがこの本を読まず、未だにただ外を速く走り回るだけの練習しかしていないのはなぜだろう。それは、「自転車には楽しく乗りたい」という気持ちと、「自分で頭を使ってピリオダイゼーションしてメニューを組むなんて、めんどうだ」という気持ちがあるのではなかろうか。

乗りたいように自転車に乗って、たまにレースに出て、そこそこの結果が出て楽しいのなら、それでよいと思うし、そういう意味では日本のホビーサイクリストに、完璧に計画されたトレーニングメニューは必要ないのかもしれない。しかし、若い選手がこれから強くなって自転車で世界を目指したいと思うのなら、しっかりとピリオダイゼーションしてパワーにもとづいたメニューをこなすことはとても重要だ。たとえそれが、美しい自然を眺め、高い山を登り、山頂の茶屋で休憩するという趣味性の高い自転車の愉しみを多少犠牲にするものであったとしても。
しかし、若い選手は金銭的な観点からパワーメーターを使って練習できないこともあるし、たとえパワーメーターを持っていたとしても、パワートレーニングの計画を自分で立てるには、多少の大学数学の知識とコンピュータでの作業が必要になるので、勉強する気にならず、億劫なのだろう。

僕の使命はこのハードルを下げることにあると考えている。例えばパワーデータの解析をスマートフォン上のアプリで、直感的にできるようにしたり、パワートレーニングの基礎知識に関して分かりやすいようにかみ砕いた記事や動画をアップロードしたり。

しかし今のところ、僕が伝えたい内容は全て『パワー・トレーニング・バイブル』に準拠することになると思う。少しでも興味を持った人がいるなら、是非購入して一度は読んでみることをお勧めする。

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