日本の自転車ロードレース界において、
「プロ選手よりもアマチュア選手の言うことの方が説得力がある」
というのは時折言われることである。
僕の情報サイト『ロードバイクアカデミー』は、そうした現在の日本の自転車ロードレース界に疑問を感じて立ち上げたというところも正直あるのだが、そもそもこの現象は何に原因があるのだろうか。
普通に考えれば、強豪アマチュアよりもプロの方が「自転車で速く走る」ということに対して真剣に向き合っていて、プロの発信する情報の方が説得力が高くあるべきである。
実際にそうではない理由について考えてみたので以下に記す。
プロが有益な情報を発信しない
まず1つ目にはこれがあると思う。
プロ選手は自転車ロードレースで結果を出すことで生活しているので、自転車に真剣に向き合っていることは間違いない。
しかし、本当に速くなるためのノウハウがあったとして、それを公開すればライバルに読まれる可能性も高い。
アマチュアと違いそこには自分の生活がかかっているので、そうした情報は公開されないことが多い。
僕の経験では、チーム内であっても、『最近始めた新しいトレーニング』みたいなことはほとんど話題に登らない。
それくらい、プロの間では、あの選手がどんなトレーニングをしているのか?といったことはお互いに謎に包まれている。当然ブログなどでトレーニング内容は書かないし。
それに加えて以下も大きく影響していると思う。
プロは企業との忖度がある
ツールド沖縄などのアマチュアの甲子園たるレースでの、メディアの盛り上がりを見るに、多くのアマチュア選手の関心事は『勝った選手はどんな機材を選びどのようにセッティングしたのか?』という点である。
プロ選手の場合、チームが契約するスポンサーの機材を使い、そのセッティングもメカの作業上の都合などで本当に自分のやりたいセッティングになっていないことが多く、「結果を出す」ということに100%フォーカスしたセッティングであるとは限らない。
そのためTOJなどのUCIレースでも、各チームの使用機材にフォーカスされることはあっても、いち個人の使用機材やセッティングがフォーカスされることは少ない。
ツール・ド・フランスなどのレースで個人のバイクが取りざたされるのは、そこに出られるようなチームは資金や人員が潤沢なため、エース級の選手が本当に速く走るためのこだわったセッティングをすることが可能だからだ。
つまりある意味では、プロ選手の機材はアマチュア選手の機材より、アマチュアにとって参考にならないと言える。
あとは心苦しいが以下のことも言える。
国内プロに風当たりが強め
国内プロというのは悪い見方をすれば
「ヨーロッパを目指して挫折した落伍者の終着点」
とか、
「ヨーロッパを目指すと大志を抱きつつも結果が伴わない夢アスニート」
とか思われていることがあるかもしれない。
実際に、高校生などの若手が
「ツール・ド・フランスに出られるワールドツアー選手になりたい!」
と言うことはあっても、
「国内のコンチネンタルチームに入ってアジアツアーに出たい!」
と言うことはまずないだろう。
そういう意味で国内プロというのはどこか軽んじられているというか、否定的な目で見られていることが多いように感じる。
そのような指摘は至極正しいと思うし、ヨーロッパのUCIレースを走ろうものなら一溜りもなく千切れてしまうこともある。
ただし、実際にJプロツアーなどでトップのアマチュア選手と国内プロ選手が同じ集団で走ることがあると、やはりその差は歴然、プロ選手の方が強いのである。
その差というのは練習にさける時間の差かもしれないが、もっと別にプロ選手の間にしか浸透していないエクササイズなどがあるのかもしれない。
そういう意味で、強くなりたいアマチュア選手には、プロの少ない情報発信の中で、プロに対してうがった見方をせずに、良いものは良いと取り入れる柔軟性をもってもらえると良いなあと感じるし、僕もアマチュアの頃からそれを意識している。
トップアマチュアの方が共感性が高い
最後に、この要因も大きいと感じている。
トップアマチュアもアマチュアなので当然仕事があり、練習時間は限られている。
その中で結果を出しているのだから、普段仕事や学校がある自分にも可能性がある、と感じられるという意味で、アマチュア選手の情報発信のほうが共感性が高いだろう。
また、目標を持って自転車に乗っているアマチュア選手も、
「結果を出してコンチネンタルチームに入りたい」
という人よりは
「○○ヒルクライム、ロードレースで勝ちたい」
という目標を持っている場合が多く、国内プロ選手が「どうしたら自分のようになれるか」という発信をしたところで、
「いや、あなたのようになりたいとは思っていませんから。」
と一蹴されかねない。
そういう意味で、プロ選手が発信する際には、コンテンツの内容に関し吟味を繰り返さなければならないと身を持って感じている。
説得力のある情報を発信するために
僕が運営するサイト「ロードバイクアカデミー」では、このような問題を解決するべく
- 科学的根拠にもとづいて
- ステマはせず
- いち選手として感じることに正直に
- ライバルに情報を知られることを恐れず
情報発信しているのでよければ見てみてほしい。