誹謗中傷と表現の自由

思考

前回の記事ではロードレーサーの交通マナーについて取り上げて意見を書いたのだが、ツイッターを見ていたら国内の有名選手が多数意見を書いていてタイムラインがカオスになっていた。
今回の論争の発端は、

某有名育成チームの選手が信号無視をして走行しているところを赤信号で停止中の自動車のドライバーに撮影されてツイッターに投稿され拡散された。所属チームが謝罪のリリースを出したほか、本人がツイッター及びインスタグラムに謝罪文を投稿した。

というもの。本人の謝罪文の投稿には多数のリプライが寄せられていて、多くは「これからは心を改めて頑張って」というものだったが、中には否定的で厳しいコメントも見られた。ここまでは良いのだが、少数の厳しいコメントにたいして、

「誹謗中傷は良くない。有望な若手選手の芽を大人の無責任な言動で摘み取らないで」

という主旨の投稿が複数目に留まった。個人的にやけに違和感があったので記事にしようと思い立った。

誹謗中傷と意見の違い

そもそも誹謗中傷とは何だろうか?論文ではないので簡易的にwikipediaを転載すると、

「誹謗」他人を悪く言うこと。そしること。
「中傷」根拠のない事を言いふらして、他人の名誉を傷つけること。

wikipediaより

となっている。そして、「誹謗中傷」とつなげて使われる時には、「根拠もないのに」といったニュアンスが含まれているように思う。少し前にテラスハウスの出演者が自殺した際に問題になったのは、出演者は法律に違反したわけでも何でもないのに、根拠なく名誉を傷つけられた点であり、これに関しては紛れもなく「誹謗中傷」に当たるだろう。しかし。。

今回のコメントは誹謗中傷に当たるのか?

今回の投稿に寄せられたリプライの批判的な意見を見てみると、「応援していただけに残念」「この行動は法律違反で言語道断」といったニュアンスがほとんどで、「根拠なく」批判しているコメントは一件もないように見受けられる。
そもそも信号無視は交通違反であり「法律違反」であって誰もが否応なく認める「悪い」行動である。テラスハウスの番組内での言動に対する根拠なき誹謗中傷とはわけが違う。
そして忘れてはならないのは、我々にはだれにでも「表現の自由」がある。その「表現」が「誹謗中傷」に当たる場合には、された方は名誉を傷つけられているので、逆にコメントした人を名誉棄損で訴えることもできる。
しかし今回のような明らかに悪い行動にたいしての批判的な意見は誹謗中傷にも名誉棄損にも当たらないと僕は考える。

投稿者は非難されるべきか?

批判の的となっているのは、批判的なコメントを投稿した人だけでなく、そもそもこの騒動を巻き起こした、動画を撮影してツイッターに投稿した投稿者も含まれる。この投稿者には「若手の有望株を晒し上げて、潰す気ですか?」といったニュアンスのコメントが寄せられている。
確かに、もっとことを小さく済ませるなら、所属チームに直接この動画を添付して苦情を送るとか、警察に提出するとか、やり方はあったと思う。世間では、危険運転を撮影した側が、逆に名誉棄損で訴えられることもあるというから、投稿者が法的に悪くなることももちろんあり得る。では、どんな場合に投稿者が悪くなるのか。

停止中にケータイを操作するのは違反にならない

道路交通法上、自動車が停止しているときにケータイを操作するのは違反にならない。少しでも動き出した時に、まだケータイを注視していた場合などは違反の対象になるが、完全に停止している間であれば、違反には該当しないのだ。その点では、当該動画では自動車は完全に停止しており、違反に当たらない。

自転車を運転する個人が特定されていない

投稿者本人は自転車の運転手の個人名に関して明言していないし、運転手本人を特定できる顔などの情報がはっきりと映っていた動画でもなかった。個人を特定できる顔などの情報があった場合、肖像権の侵害などで投稿者が悪くなることもあるが、今回はそうではない。本人が謝罪のコメントを発信しなかったら、特定に至ることなく騒ぎが収束していたかもしれない。
今回は自転車を運転していた選手が有名選手であったことから、使用機材などから多くの人が「〇選手では?」という推測に至ったようだが、通常の見解ではこの動画は個人を特定するに至る情報は含まれていないと考えられると思う。

よって、この動画を撮影してツイッターに投稿した投稿者は法律的に見れば悪いことをしたわけではないと思う。そして、「ではなぜわざわざ投稿する必要があったのか」という批判については、投稿することが投稿者本人の「表現」だったからであり、この批判は、カフェでパフェの写真を撮って投稿する人にたいして「その投稿、する必要ある?」と聞くくらい筋違いだ。

僕の意見: 当該選手が批判されてしかるべき

僕の意見では、当該選手は明らかな交通違反をしており、それに対する批判的なコメントは「至極まっとうな意見」であり、当該選手は素直に受け止め反省するべきだと思う。
しかし、寄せられたコメントの多くは「しっかり反省して、気を落とさず頑張って!」などの暖かい意見であり、明らかな交通違反をしてもこのように言ってもらえるのは、本人の日ごろの行いやレースでの結果、人柄などがもたらした結果だったと思う。
僕としては彼を有望な後輩として応援していると同時にライバル視もしているので、ロードレーサーの品位を下げるような行動はもう二度としないでほしいと思う。そして、立ち直ってまた一緒にレースを走れるのを楽しみにしている。

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